The Firewood Projectが鳴らす胸の奥底に響く音楽


蘇生を試み、全身に血液が循環していくような。

カラッカラに乾いた喉が潤い、身体の隅々まで瑞々しさが行き渡って再生が始まる。

the firewood project(ファイヤーウッドプロジェクト)の1stアルバム「causes」を聴いた瞬間、真っ先に重ねた感覚。

湧き上がってきたといいますか。

今、この時代、ある種の出尽くして疲弊しきった様子が否めないシーンにとって重要な何かを紡ぎ出してくれそうな期待と、我々リスナーにとっては層を問わず青い感情に訴えかけては大切な何かを呼び覚ましてくれる「力強さ」を感じてしまいました。

the get up kidsのような疾走感、texas is the reasonのギャレットを彷彿とさせる独特の唄い回し。

jimmy eat worldの名盤「clarity」に通ずる、正統派のメロディライン。

90年代USインディーロック、エモのDNAを継承し、現代風に昇華した音楽性。

再構築することのない伝説の国内アンダーグランドシーンを駆け抜け、今を生きる平林氏を中心としたメンバーから発信される確かな説得力。

今回は待ちわびたと言わんばかりに私にとっても嬉しいバンド、魅力たっぷりのthe firewood projectについて。

メンバー

平林一哉 -vocal&guitar

岸野一 - bass

山崎聖之 - drums

現在husking beeにも在籍している平林氏を筆頭に、malegoatの岸野氏、そしてfam/LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERSの山崎氏という豪華な顔ぶれとなっております。(岸野氏、山崎氏は共に2012年~2016年にかけてhusking beeにも在籍しておられました)

その他、過去に元puli、現country yard(以前、山崎氏も在籍)のギタリスト宮本氏も在籍。

現在、サポートギタリストはワタナベカズヤ氏。(後に正式メンバーになります)

結成のきっかけは、husking beeで三人が一緒にプレイしていた事、好みの音楽が似通って共通していた事、そして「2016年の岸野氏、山崎氏husking bee脱退」という大きな出来事が一つのきっかけとなったようです。

平林氏は90年代hi-standardを中心とした国内インディーズシーンの中で、SPIT MIDDLE FINGERTHE NERVELANDに在籍していました。

当時、sherbet、thumbのドラマー片山氏(現Noshow)が主催するレーベルspice of lifeから1995年リリースのオムニバス「something else」(他にはgreen giant、sherbet、husking bee、Life ball、back drop bombなども参加)にSPIT MIDDLE FINGERの楽曲は収録されていましたが、当時私はノーマーク。(お恥ずかしい)

結果、平林氏のボーカルを初めて認識したのはhusking bee2001年リリースのトラック「新利の風」。

サビの、何だ?この素敵な声は?誰だ?と思ったら、平林氏でした。

そして、同作品収録トラック「NEW HORIZON」ではリードボーカルをとっているし。
(これがまためちゃくちゃ良いです。)

天性の歌声。希少タイプのボーカリストではないでしょうか。

この声で、エモみ満載のメロディを唄われたらグッと来ないワケがないし、好きにならないワケがない。

「本当に欲しかったモノを与えてくれた」、もしくは「心に空いてしまった隙間にピンポイントでアプローチして優しく埋めてくれる」ようなバンドがfirewood projectです 。

ちなみに平林氏はソロ音源もリリースしておりこちらもおすすめです。

ディスコグラフィー

・1st ep 「KEYS & LIGHTS E.P」

リリース:2016年11月

・収録曲

1.Behind The Door
2.Plastic And Gold
3.Quarter Moon

・1st album 「causes」

リリース:2018年3月28日

・収録曲
1.The Midnight Sun
2.Moratorium
3.Deviation
4.Scarecrows
5.Dove In A Haze
6.Reach You
7.Behind The Door
8.Ghost

causesを聴いてみて

冒頭で挙げたemo界隈を代表するバンドの他、Chamberlainのような何とも言えない乾いた空気感、promise ringやmaritimeのような愛くるしいメロディ、様々な要素を感じられる質感豊かな楽曲が組み込まれた作風に仕上がっているのではないでしょうか。

そして、90年代国内メロコアシーンの匂いも当然の如くほのかに。

総体的に聴きやすくて深みと奥行きのある感じ。

何より大切な、「心に響くこの余韻。」

「やっぱり唄って良いなぁ」と数年ぶりに感じさせてくれた音源です。

音像の輪郭がハッキリとした乾いたギターサウンドの設定が色々気になってしまいます。

キャッチーでセンスあるフレーズにも嬉しさからニヤッと。

そして山崎氏のドラムは手数、フレーズ、サウンドそれぞれに独自性に溢れたプレイを体現しており、

かっこいいとダサいの境界線があるとするならば、そのど真ん中を自在にコントロールして走っている様な、つまりはドラムという楽器を知り尽くして叩いている印象が強いです。

特にキックの音、間合いは個人的な好みで気持ちが高揚してしまいました。

fam(どちらかというとchanges here辺りが好き)に所属しながら、他に多くのバンド、ミュージシャンからお声が掛かる事にも頷けます。

「センスがあって探究心に溢れた努力家」と勝手な妄想が。

平林氏のボーカルとメロディに重きを置き、シンプルだけど限られたフレーズと間合いの中で随所に凝ったアンサンブルで支える岸野氏&山崎氏のリズム隊も必聴です。

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編集後記(まとめ)

変化に伴ったムーブメントの衰退はいつでも切り離せない事象です。

しかし、こういう作品が今この時代に生まれてきた事が心から嬉しい。

ベーシスト岸野氏は、2012年頃~近年まで続いていた90’emoバンド再結成ブームの最中、into it over itやhey mercedesなど多くの海外emoバンドを日本に招き、The Lost Boys名義の元、幾つかのイベントを企画するプロモーターとしてシーンに貢献、牽引していたりと、メンバーそれぞれがフィールド豊かな話題性のあるthe firewood project。

アルバム一曲目の「the midnight sun」をもう何十回、いやもう100回は軽く聴きました。

聴いていると、自分の人生の色んな事をなぜか思い出してしまい、何ともいえない気持ちになってしまいます。

喜びも苦悩も、愛や希望とか、そして戻らない後悔と過去の選択、葛藤、突き刺さる痛み、いろんなことが脳裏を駆け巡ります。

それでも今を生きているし、明日からまた生き抜いてやるって。不思議な感情です。

よく解らないけれど、皆が幸せであればそれでいいし、大切だと思える人は幸せでいてほしい。またいつか会えるから。大丈夫だから。

胸の奥に響く音楽って本当に素晴らしいです。

以上、最後までお付き合い下さって誠にありがとうございました。

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